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お知らせ

2012

2012/01/20

お知らせ

交通新聞掲載

日本コンサルタンツ 田中社長インタビュー

日本コンサルタンツ 田中社長インタビュー

日本コンサルタンツ 田中社長インタビュー

交通新聞 2012年1月20日付 掲載

 日本政府が成長戦略の一つとして掲げた鉄道技術の海外展開に合わせて、昨年11月1日付で国内の鉄道事業者7社が共同出資する「日本コンサルタンツ株式会社」が設立された。地球環境保全問題や経済成長の著しいアジア各国の都市部でみられる慢性的な自動車交通混雑の解消策として、公共交通機関の鉄道に世界中から注目が集まる。4月1日からの本格的な営業開始を前に、田中正典社長に話を聞いた。(渡辺 丈夫記者)

 ――近年、世界では鉄道に対する関心が高くなっています。どのような背景があるのでしょうか。

環境面、安全性に優れた鉄道に注目

 田中:二酸化炭素の排出量増大など、いわゆる地球環境問題の観点から環境性能に優れた公共交通としての鉄道を見直そうという機運が世界的に高まっています。特に東南アジア各国をみますと、人口増加に伴う大都市部への人口集中によって、道路交通の慢性的な混雑状況が続いています。自動車やオートバイによる交通手段はすでに限界に達しており、効率的な都市交通体系を構築する上でも安全性、定時性などに優れた鉄道に注目が集まっています。

 ――昨年12月にはベトナムを訪問されたそうですね。

 田中:前職のジェイアール東日本コンサルタンツ時代から何回かうかがっており、ベトナムの交通事情については理解していました。ここ数年、ベトナム国民の生活水準は着実に上昇しており、このことが自動車交通量を増加させ、結果的に激しい道路混雑状況を生み出しているのが現状です。将来的に考えると、鉄道のような公共輸送機関がなければ、都市として成り立っていかないと感じましたね。
ベトナムには都市間を結ぶ鉄道ルートはありますが、都市鉄道は未整備のため、現在は自動車やオートバイが主流を占めている状況です。政府でも鉄道輸送の重要性は認識しており、ホーチミン、ハノイとも多くの新線建設計画を立てています。当社としても何らかの支援ができればと思っているところです。

――昨年11月1日に発足した日本コンサルタンツについては。

 田中:安全性、環境性、信頼性などに優れている日本の鉄道技術やシステムを海外で提案していく上では、専門のコンサルティング会社が不可欠となります。今、世界で鉄道整備を必要としている国からは、単にモノ(鉄道)をつくるだけでなく、メンテナンス、教育、オペレーション技術など、トータルで支援してほしいというニーズが高まっています。
 日本では、そのノウハウを持っているのは鉄道事業者であり、都市鉄道、高速鉄道、貨物鉄道などに精通した、JR東日本、JR西日本、東京地下鉄、JR九州、JR貨物、東京急行電鉄、京阪電気鉄道の出資によって、日本コンサルタンツが設立されました。鉄道システムの海外展開を成長戦略の一つとして位置付けている日本政府に対しても、何らかの形でお役に立てればと思っています。

 ――鉄道コンサルティング業務とは、どのような内容ですか。

構想、設計・入札段階を中心に

 田中:計画のガイドライン策定やマスタープラン作成、海外の鉄道に関する調査を行う「構想」段階から始まり、次に投資額や採算性の算定を通じてのプロジェクトの具体化、発注方式の提案などを行う「フィージビリティ・スタディ」(事業可能性調査)があります。その上で、「設計・入札」「工事施工プロセスなどの監理」「海外鉄道事業者に対する鉄道運営・メンテナンス技術の支援」などを一連の流れの中で進めていくことになります。当社では、構想から設計・入札段階までを主に行っていきます。
 今、世界では単なる鉄道建設にとどまらず、技術的にも複雑な高架化事業についても関心が高いようです。また、JR東日本の首都圏各駅で見られるような生活サービス事業についても、運賃収入に次ぐ新たな収入確保への有効手段として注目されていますので、さまざまな形で提案していきたいと考えています。当面はアジア地域の都市鉄道を中心に当社の事業を進めていくことを検討しています。

 ――海外でさらなる売り込みを図るために必要なことは。

 田中:これまで、鉄道産業については日本国内である程度の需要が見込めましたが、人口減少時代に入っている今、将来的な伸びは期待できず、業界発展のためには、必然的に海外に目を向けざるを得ません。では、例えば、日本仕様の鉄道車両がそのまま海外各国に受け入れられるかというと、かなり難しい面があります。その国のニーズに合った鉄道車両や構造物、システムなどをいかにつくり上げていくかがカギとなります。そのためには海外の鉄道仕様などについて、これまで以上に研究していくことが不可欠になります。
 もう一つの課題としては、過去に日本側が提案してきた鉄道プロジェクトの価格が、外国からは「高い」というイメージが強く、この点をどう解消していくかです。メンテナンス、教育などのソフト面を含めたトータルコストとしては決して高くないと思いますが、PRの仕方も必ずしも十分ではなかったようです。また、日本側の事情としては、日本仕様から一歩も離れたくないという意識もあったのではないでしょうか。少数のロットを製造していくという点が経営的なマイナス要素と判断され、そのことが業界全体としての海外進出を躊躇(ちゅうちょ)させていたのではないでしょうか。
 これからは、例えば車両については日本仕様をベースにした上で、小ロット、低価格でも十分な利益を生み出せる仕組みを構築していくことが大切になります。コンサルティング業務による、さまざまなアプローチを通じて、業界を盛り上げていくことも当社の使命であると考えています。

 ――海外の鉄道コンサルティング会社との競争に打ち勝つ秘策とは?

国内外企業との連携が不可欠に

 田中:日本の鉄道の最大のセールスポイントは安全性、安定性、快適性、信頼性などです。その点を前面に出しつつ、ハード・ソフト両面から、その国に合った鉄道システムを提案していくことになります。フランス、ドイツには世界的に有名な会社はありますが、まずは日本ならではのメリットを積極的にアピールしていくことが大切です。各国の現状をしっかり把握しながら、一国の鉄道プロジェクトを担える人材を確保していくことも大事になりますので、そのためにも一つでも多くのプロジェクトを受注していかなければなりません。
 幸いにも当社は、JR東日本はじめJR西日本、東京地下鉄などの支援をいただいていることが大きな強みであり、各国の鉄道関係者からも期待が寄せられているところです。国内外の企業とも連携しながら、最先端技術やシステム、事業運営など、鉄道に関するあらゆるノウハウを提案していくことになるのが日本コンサルタンツとなります。人的、技術的なバックアップ態勢を着実に整えていきます。

 ――4月1日からの本格的な営業開始に向けての決意を。

受注量を拡大し早期の黒字化を

 田中:当面は海外経験や技術・ノウハウの獲得が当社の大きな課題として挙げられますが、ベテランと若い世代が一緒になって業務を進めていくことで、コンサルティング業務に必要なノウハウや知識を身に付けることができます。若い人材を育てていくことは、これからの日本の鉄道産業の発展にも不可欠となります。まずは事業の柱となる鉄道コンサルティング業務をしっかり行うことを第一に、当社に派遣していただいた各社の人材を各国で活躍できるコンサルタントとして育てていく。そして、帰国後には、各国で得た知識、経験をそれぞれの鉄道会社に持ち帰り、各社の海外事業展開に生かしてもらえれば、と考えています。
 コンサルティング業務を一企業体の事業として成立させていくためには、プロジェクト全体の進行をつかさどる専門マネージャーをどう育成していくかにかかってきます。そのためにも業務受注量を着実に拡大して早期の会社黒字化を達成することで、一人でも多くのプロジェクトマネージャーを育てていくための環境を整備していく必要があります。
 若い時代に海外で業務を経験することは、その後の人生においても大いに価値あるものとなります。最初は苦労するとは思いますが、ぜひとも海外事業を志してほしい思っています。
 当社設立に当たって出資していただいた鉄道事業者や、国土交通省、関係各機関の期待に応え、日本の鉄道産業を発展させるためにも全力を注いでいきますので、当社に対するさらなる支援をお願いいたします。

 略歴 たなか・まさのり 1973年(昭和48年)4月国鉄入社。87年4月JR東日本入社。東北地域本社工務部長、東京工事事務所次長、総合企画本部投資計画部担当部長、同投資計画部長、東京支社次長、大宮支社長。2001年(平成13年)6月取締役・大宮支社長。2004年6月常務。2007年6月からジェイアール東日本コンサルタンツ代表取締役社長。2011年11月から現職。熊本県出身。61歳。

日本コンサルタンツ株式会社
▽商号=日本(にっぽん)コンサルタンツ株式会社
Japan International Consultants for Transportation Co., Ltd(略称・JIC)
▽本店所在地=東京都渋谷区
▽設立日=2011年(平成23年)11月1日
▽資本金=4億8000万円
▽出資構成=JR東日本54%、JR西日本21%、東京地下鉄21%、JR九州、JR貨物、東京急行電鉄、京阪電気鉄道各1%
▽主な業務=鉄道プロジェクトに関する調査、鉄道・その他交通システムに関するコンサルティング、海外への鉄道専門家の派遣、海外の鉄道関係者の受け入れおよび教育訓練など。